大学生の塾の勉強コラム

熱力学の基礎その1

 

前期期末テストが終わり、夏休みをいかがお過ごしでしょうか。

一般教養科目から専門科目まで様々な科目を履修してこられたことと思いますが、本コラムでは熱力学について説明をいたします。

熱は直接観測することが難しいため苦手意識を持つ方が多いですが、今回は熱力学の基礎を中心にお話します。

 

熱力学は物質の持つエネルギーの出入りを扱う学問です。

エネルギーとは仕事をする能力のことで、以下のような形態が存在します。

・ 力学的エネルギー

・ 電気エネルギー

・ 熱エネルギー

・ 化学エネルギー

・ 電磁波エネルギー

・ 核エネルギー

 

これらの形態の変換には、エンジン、発電機、電気分解、燃焼反応、吸熱反応などがありますが、エネルギーは何もないところから突然生成されることはなく、また消え去ったりすることはありません。

これはつまり、「全宇宙のエネルギーの総量は一定である」というエネルギー保存則のことなのです。

そして特に熱力学では、力学的エネルギー、熱エネルギー、化学エネルギーの3つの形態に着目することが多いため、これらのエネルギーの出入りを理解することが大切になります。

 

それでは熱力学を理解する上で重要な基本事項を説明していきます。

 

系の種類について

前述の通り、熱力学では物質の持つエネルギーの出入りを扱います。

ですから着目する物質と、それ以外のものとを明確に区別して考えなくてはなりません。

そこで着目した物質を「系」、それ以外のものを「外界」と呼び、系と外界とは「境界」によって隔てられるとして考えます。

熱力学では系と外界との間でやりとりされるエネルギーを、仕事、熱、物質の3種類に区別し、系を以下の4種類に分類します。

さらに詳しく

① 開いた系 ( 3種類すべてエネルギーのやりとりできる )

② 閉じた系 ( 熱と仕事のやりとりできる )

③ 断熱系 ( 仕事のみやりとりできる )

④ 孤立系 ( 一切のやりとりができない )

 

①開いた系のイメージは、水を入れた鍋をガスコンロで加熱する系です。

②閉じた系のイメージは、水を入れて蓋で密閉した鍋をガスコンロで加熱する系です。

蓋で密閉されているため物質のやりとりはできません。

③断熱系のイメージは、水を入れた鍋全体を断熱材で覆った系です。

物質のやりとりはできませんし、断熱材で覆われているため熱のやりとりもできません。

( ④孤立系は適切な例が思い浮かばないため割愛させていただきます )

なお、系と外界とを合わせたものは「宇宙」と定義され、孤立系になります。

 

熱力学第零法則

物体同士の間で熱がどちらにも移動しない状態、すなわち熱平衡に関する法則です。

ココがポイント

●熱力学第零法則

「物体Aと物体Bが同じ温度、物体Bと物体Cが同じ温度であるならば、物体Aと物体Cも同じ温度である」

 

温度の異なる物体同士を接触させて長時間放置しておくと、熱は温度の高い物体から温度の低い物体へと移動するため、最終的には熱平衡状態になります。

 

熱力学第一法則

「孤立系においてエネルギーは突然生成されることはなく、突然消え去ったりすることはない」

ということを定式化した法則で、以下の非常にシンプルな式で表されます。

ココがポイント

●熱力学第一法則

⊿U = q + w

 

ここで⊿Uは内部エネルギー、qは系に入ってくる熱、wは系が受け取った仕事 を表しています。

教科書によっては系が受け取った仕事をwin、系が外部にした仕事をwoutと明記する場合があり、熱力学第一法則は

⊿U = q + win

⊿U = q - wout

と表現されることもあります。

 

熱力学第二法則

自然に起こる変化(自発変化)というのは一方的です。

お風呂のお湯の温度が時間経過とともに下がっていくことはあっても、温度の低い周囲の物体から熱を受け取ってお湯の温度が上がることはありません。

水の中に垂らしたインクが徐々に全体に広がっていくことはあっても、インクがどこか一点に集まってくることはありません。

このように、私たちは過去の経験則に基づいて変化の方向を予測することができます。

しかしこれまで経験したことがないような未知の現象に関してはどのように変化の方向を予測すればよいでしょうか。

この自発変化の方向の判定に関する法則が熱力学第二法則なのです。

ココがポイント

●熱力学第二法則

「孤立系では、自発変化はエントロピーが増大する方向に進む」

 

エントロピーは物質やエネルギーの無秩序さ・乱雑さを示す尺度であり、Sと表されます。

エントロピー変化⊿Sは以下で定義されます。

⊿S = qrev / T

ここでqrevは可逆的に移動した熱エネルギー、Tは系の絶対温度 を表しています。

可逆・不可逆の詳細説明は割愛しますが、状態が変化しても再びもとの状態に戻ることができる変化を可逆と言います。

再びもとの状態に戻すために外部から仕事を加える必要がある変化を不可逆と言います。

( 自然界の変化は全て不可逆変化です )

 

熱力学第三法則

前項ではエントロピー変化⊿Sの定義式を紹介しましたが、分母に絶対温度Tがありました。

では絶対温度T=0K(絶対零度)ではエントロピー変化⊿Sはどのように考えればよいでしょう。

数学の極限値計算を行えばよいかというと、そうではありません。

そもそも絶対零度では分子や原子の振動などの熱運動がゼロになるため、周囲に熱を伝達することができません。

つまりqrev=0となります。

そこで、

ココがポイント

●熱力学第三法則

「物体は絶対零度ではエントロピーの絶対値をS=0とする」

 

と定義したわけです。

これによって任意の温度でのエントロピーの絶対値(S)を見積もることができるようになります。

特に化学反応の変化の方向を推測する際に重要になります。

 

いかがだったでしょうか。

熱力学の導入部分を説明しましたが、専門用語が多く難しく感じた方がいらっしゃるかもしれません。

これ以外にも熱力学特有の用語がありますので、次回以降は用語の説明を行っていこうと思います。

このコラムが熱力学を苦手とする方の手助けになることを祈っています。

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  • この記事を書いた人

斎藤先生

【猫の手ゼミナール講師】斎藤隆先 【出身大学】横浜国立大学大学院工学府システム統合工学専攻博士課程前期修了 【指導科目】数学(微分積分、線形代数):物理(力学、熱力学)

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